12月7日日曜日。日能研のマスタークラスチャレンジテスト受験。
目標は畏れ多くも特待生合格。
*はじめに*
テスト後、掲示板や日記で結果については簡単に触れたのだけど、テストの詳細やその後の我が家の展開をなかなかここに書けずにいた。
我が家は前回書いた経緯通りいともお気楽に「特待狙おう♪」などと言っていたのだけど、そのUP&テスト後急に増えたメールを拝読すると、このマスターテストは現在とても熱い注目を浴びていることがわかった。
(気づくのが遅いんだってば。)
テストの内容、結果、今後の授業展開などなど…、マスタークラスに関する情報が少なくまた混沌としているようで、ここのようなしょぼしょぼとたま〜にUPされるものさえ気になる、というところらしい。
とても真剣なメールを読ませていただくにつれ、いつものごとく脳天気で親ばか全開のテキストを書くのがためらわれてしまったわけで。
出来うる限り客観的で有益な情報を、と考えるにつけ、手が止まってしまった。
わたしにはそういうの、無理!(断言)
降参です、やっぱり親ばか調でしか書けません。
どうか勘弁してやってくださいませ〜。
*テスト当日まで*
珍しく、テストのための勉強をすると言い出した長男くん。
相当Nゲージの線路がほしいらしい…。
日能研のカリキュラム進度表のようなものを見せたところ、算数の「比」や「速さ」は全然やっていないからそこを教えてくれと言う。
以前の公開模試で何一つ書けなかった理科の「プランクトン」もやっておきたいとのこと。
そこで算数は夏休みに使った『プラスワン』、理科は『最高水準ノート(生物・宇宙・地球編)』の該当箇所をやってみることにする。
とはいっても、まるっきり初めての単元。 解説と解答をよく読みこんでおく程度が精一杯だった。
どちらの本も解説がよくできていると思う。問題集だけれども結局は参考書のように読んでおしまいになった。
それでも本人はやった気になったようで、当日は張り切って出かけていった。
当日、今回はわたしも保護者会に参加する。
保護者会は、長男くんたち4年生が受けている教室の隣の教室で行われた。
テストを受けている人数に圧倒される。こんなに大勢がこの校舎の子達なのだろうか。それともN研生ではない子達が多いのだろうか。
室長先生が集まった父兄(外部生の保護者のみだったように思う)に説明をしてくださる。
「今回の内訳は、この校舎では内部生が8割、外部のお子さんが2割といったところです。」
この校舎の4年生は現在5クラスらしい。その「一部」の子どもたちだけが受けているとか。
すごい人数が在籍しているんだなぁとあらためて驚く。
特待生は今回のテストの上位100位まで。
だいたい70〜80くらい校舎があるらしいから、単純に考えれば特待生は1校舎に2人未満という計算になる。
ということは…?
あの教室で受けている大勢の中でほぼTOPにならなきゃ無理ってことだ…。
そう気づいた時点で、はっきり言ってわたしはあきらめてしまった。
マスタークラスの説明もイイカゲンに流して聞いていた。(ゲンキンな奴です。)
そんな根性のない母のことなど気にもせず、長男くんは必死にテストにチャレンジしていた。
ドアの上のガラス部分から教室を覗いて長男くんの姿をみつけたとき、思わず胸がぎゅっとなった。
長男くんは、もう終了時間ぎりぎりだというのに、鉛筆から手を離さずテスト用紙に向かっているのだ。
何か一生懸命書いている。書いたり消したりまた書いたり。ページをめくってまた書いている。
わたしは彼がテストをしている光景を見たのは初めてだ。
もうかなりのお子さんたちがテスト用紙に向かわずにいる中、最後まで諦めずに一生懸命やっている姿に胸を打たれた。
おかあさんたちが覗いていることなどちっとも気が付かない。
えらいよ…。すごいよ…。
その姿を見せてもらえただけで、わたしはもう十分だ。
パパにも伝えるよ。特待生が無理だとしても、とても立派だったって。
長い時間のテストが終わった。
「疲れた〜」と言って出てきた。
ほんとうにおつかれさま。よくがんばったね。
帰宅後、問題をみせてもらった。
難しい。
算数の比や速さも、理科のプランクトンも出ていなかった。
彼は「せっかくやったのに損したかなぁ」と言うので、「そのうち必ずやるところなんだから損ってことはないよ」と答える。
忘れちゃいけないよ。1回の模試のために勉強しているんじゃないってことを。
どの教科も、知識よりも、頭を使って論理的に答えを出していく設問が続く。
記述も多い。
たしかにこれは疲れるだろうなぁ。
4教科目の理科の問題など、最初の問題で「くさった肉」とか「うじ」などと出てくる。
長時間問題を解いてきて、最後の教科で「蛆」ですか…。
繊細な子なら具合悪くなるぞ。
受験には、体力も精神力も重要だとよくわかった。
当日は解答はもらえない。
わたしが問題を解いて答えを出してみる。
国語は大人にとっては素直な問題にうつる。でも長男くんには難しいだろう。
『頭の体操』や推理クイズの本を読んでいればとっつきやすいのかもしれない。
よくて半分くらいとれている程度か。
算数も思考力が試される問題が多い。
現時点で持っている知識のどれを組み合わせて解いたらいいかを考える問題や、知識ではなく論理のみですすめていく問題とがある。
どちらも「気づけるかどうか」で明暗をわけそうだ。
最初の1問目、できなかったと言う。図形の問題だ。
「角度で30度が出てきたら何を考えるんだっけ?」とヒントをあげると、「ああああああああ。正三角形の半分かあああ」とようやく気づく。
「そそ。そうすると辺が1対2ってわかるんだよね」と言うと、「なんで気づかなかったのかなぁ」としょんぼりしている。
いいじゃん。次に出てきたらきっと「秒殺」さ。
(『中学への算数』という月刊誌でこの「秒殺」という言葉が出てきて、長男くんのお気に入りになっている。)
算数は T大2次風に言えば、(7題中)完答3題、あとは部分点、といったところか。
よくて6割程度だろう。
いつも得意な社会。
最初のほうの地図や地理まんまの問題はよくできていた。
「長野県」と答えている問題や地図で「2000分の1」と答えている問題があって、彼の説明を聞いてもわたしには正解なのかよくわからなかったけれど、本人は「だいじょうぶ、あってる」とあっさり言う。
だったらあってるんだろうね。わたしには地理はお手上げ。
が、最後のほうに社会常識的な問題が出てきた。
あら。『ライオンは眠れない』だわ。
「うちにこの本あるよ。」と言うと、「ええ?!読んでおけばよかった」と残念そう。
読んでなくともできそうなんだけど…。と問題を見て思ったがそれはお間違い。
「(日本の)小泉首相」を「北朝鮮。キムジョンイル」と答えている…。
「中国」と答えるところは「イラク」。
彼なりに考えたことはよくわかるんだけど…。難しく考えすぎだよ。
理科は最初の実験の推察で間違えがある。
それを説明していると、さすがに疲れがピークに達したのか、「もういいや。また明日でもいい?」と弱音が出る。
ここまでの自己採点の感触では、6割いくかいかないかという得点。
たしかに気力も萎えてくるよね。
復習はその日のうちにまず1回、がモットーだけど、今日は限界だと見て取る。
わたしだって疲れたのだから、長時間のテスト後の彼にはこれ以上はやっても意味がないだろう。
「そうだね、明日にしよう。」と片付け始めると、長男くんがぼそっと言う。
「特待はだめ。無理。」
え?まだわからないじゃない。諦めるのは早いよ。
そう言ってもさらにはっきりと「全然だめー!Nゲージはあきらめる」ときっぱり。
そうか…。
それほど感触が悪かったんだね。
たしかに今まで受けたことのあるテストとは全然違ったものね。 難易度も内容も。
一生懸命取り組んだだけに、出来なくて余計に疲労感も大きいのだろう。
なんだかかわいそうになってしまった。
*テスト後*
特待生になってほしいと思っているのは親の都合だ。
そしてご褒美で釣って、受験させた。
結果、大きな壁をありありと感じさせることになってしまったのだ。
この壁はいずれ立ちはだかる壁だとはわかっていた。
今回のテストの内容は、実際の入試問題に近いと思う。 (さすがに難易度は実際より易しいけれど。)
知識のみでは解けず、その組み合わせを探して解く問題。抜き出しではなく、自分の言葉を使って書く記述。
初見でわからなくとも、論理でせめていけば糸口がみつかる問題。
すべて実際の入試問題と似ている。
今は中学受験のための学力の基礎を固める時期。
しっかり地盤を固めて裾野を広げて、その上で6年生の夏ごろになってから、過去問などでこういったレベルの問題にあたるだろうと予想していた。
なのに、今この時期に、基礎を飛び越して応用問題にあたることになってしまったのだ。
こういう問題が出ることを予想していなかったわたしが悪かった。
わかっていれば受けさせなかったかもしれない。
受けさせるとしても、何らかの対策をたてておいたと思う。(それが精神的レベルであっても。)
新4年生の2月から今まで、それまで全くやったことのない勉強を始め、記憶力と集中力と努力で知識を広げ、ここまできた。 成績があがる喜び、知識が増えるおもしろさ、努力すれば結果に結びつく手応え、それらが今の彼の勉強への土台だろう。
予定よりも1年半も早く、基礎的な知識だけではたどりつけない世界を彼に見せてしまった。
このことは、今までの地道な努力、これからの意欲を打ち消すことになりかねない。
親の失敗だ。 フォローが必要だ。
わたしはそう一途に思い込んだ。
今までもやり方で間違っていないんだ。ほんとうにここまでよくやってきた。このまま地道に学習していけば必ずうまくいく。
そういう自信を取り戻さなくてはいけない。
だけどどうやって?
悩んで、そしてパパぽんに相談した。
説明し終わったところに、ちょうど長男くんがやってきた。
パパぽんが長男くんに向かって言った。
「全然できなかったんだって?」
お・・・おいっ。そんなマイナスな言葉をストレートに!
案の定、長男くんは言葉少なに「うん」と頷くだけ。
「じゃあNゲージはだめだな」
さらに追い討ちをかけてる。なんなのー?!
「うん…だめだと思う」
本人に「だめ」をまたわざわざ意識させて言わせてどうするの!
母、沸騰寸前。
口をはさもうとしたところで、パパぽんがさえぎって続ける。
「きっと、おまえができなかったんだったら、他の子もできてないよ。」
長男くんがぱっと顔をあげる。
「え?そう?」
「そうに決まってる。まあ中にはもっとできる子だっているだろうけど、100人以上はいないと思うな。だって前に受けた日能研の模試と全然ちがったんだろ?なら日能研の子もみんなできないよ。」
どんどん長男くんが勢いづくのが見た目にもわかる。
「じゃあさ、平均点低いと思う?」
「そりゃそうだよ。おまえがこれしかとれてないんだから。」
「じゃあさ、じゃあさ、もしかしたら特待生に入れるかもしれない?」
「もちろん。パパは大丈夫だと思うよ。ほら算数のここ、計算ミスに気づいて直してるだろ?」
指差したのは、算数の問題用紙。余白にしてある計算、たしかに最初は間違えていて後から直した形跡がある。
「うん。これ見直しのときに、足し算間違えてるのに気がついたの」
「これがあってるか間違ってるかで10点は違うはずだよ。この10点で100位に入れるか入れないか決まったかもよ。」
「見直しやってよかったー」
「だろ?えらいよ。よくやった。あとは結果が返ってからのお楽しみだ。」
「はーい!楽しみだねー」
パパぽん…。わたしは感動した。あなたはすごいっ。
お見事!
計算ミスに気づいて直したことなんて、わたしはわかってなかったよ。
あんなにケアレスミスに気をつけて、とか、見直しをしなさい、って言ってたくせに、ちゃんとそれができていることに気づいていなかった。
ありがとう。
長男くんが自信を取り戻したのが見ていてよくわかる。顔が違うもの。
とても嬉しい。
それでやっぱり特待だめだったらどうするの?
「うーん。まあそのときはそのときでまた考えるよ」
そ、そうですか。そこまでは考えてなかったのね。
「行き当たりばったりでもなんとかなるもんだよ」
そうね、パパぽん、たしかにあなたならなんとかしてくれそうだ。
その週の金曜日。
成績をもらいに日能研に行った。
教室で待っていると、室長先生がドアを開けておっしゃった。
「すみません。もう少しお待ちいただけますか?」
時間は過ぎてるのに…。
「今、大事な書類を印刷しています。」
大事な書類?
「特待の手続き書類です。もうすぐですから」
再び閉まったドアに向かって、ぽかんとしたあと、あわてて頭を下げている自分がいた。
何度も。
何度も。
(続く)
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