中学受験体験記 アン・ローズHomestudy<12>
<12>転塾するか否か



普通の入塾の締め切りは25日らしいが、特待は20日締め切り。あと1週間しかない。
その間にすべてを決めなきゃ。

その日、学校から帰った長男くんに「特待、受かってたよ」と言うと、「ほんとお!?」と走ってくる。
我が家は走るほど広い家ではないので、案の定椅子にぶつかってころげるように封筒を開けている。
嬉しいよね、うん、すっごく嬉しいよね。

書類を見ながらにまにまと喜びにひたっている長男くんに、大事な質問をしなくちゃいけない。
「どうする?日能研に行く?それとも今の塾のままにする?」
長男くんはためらいもなく、「日能研に行くー」と答える。
「じゃあね。もしもお金のことは全然関係ないとしたら、どっちの塾がいい?」と再度尋ねる。
少し考えてからこう答えが返ってきた。 「だったらどっちがいいかなー。」
決めかねているようだ。(というより、何も考えていなかったのだろう。)

たとえ5年生の前期だけでも、特待生になってくれたら家計は助かる。
普段の授業、カリテ代、春期講習に夏期講習まで無料だ。 軽く30万以上は浮く。
でもそのためだけに転塾「させる」のはやはり気が引けるし、不安だ。
無理矢理の転塾であってはならない。
本人が納得して移るのならいいけれど、そうでないなら今の塾のままでもいいと思う。
長男くんの本当の気持ちが知りたい。

「今の塾、すごくいいよね。」そう振ってみる。
「うん。ここに入って勉強したから成績あがったんだよね。」
「だったら無理に替わらなくてもいいの。今の塾がいいならそれでもいいんだもの。」
またしばらく考えてから、彼は言った。
「でも、5年生になると、今の塾はすごくいっぱい塾に行かなきゃならないんだよね。YTもときどき遠くまで行かなきゃならないし。」
そうなのだ。5年生になったら、週に3日、そのうち2日は4時半過ぎから9時過ぎまで授業。
9時には眠くなる長男くんにはつらいかもしれない。
そして毎週土曜日はYTテストだから週に4日は塾。
さらにYTの総合回や組み分けテストなどは、遠くの四谷大塚本体まで行って受けなきゃならない。

「そうすると遊ぶ時間がなくなっちゃうもん。日能研なら6時からだから、校庭開放で遊んでからでも余裕。」
うーん。でも授業時間が短い分は家庭学習の時間が増えるってことなんじゃないかな。
その辺はあまり甘く見ないほうがいいと思うよ。
「そっかー。わかったー。でもやっぱり日能研がいい気がするなぁ。みんなおそろいのかばん持ってて、あれいいよね。」
え?Nバッグのこと?
あ、あれがうらやましいのかぁ。ちょっと意外。
わたしだったら遠慮したいかも…。でもたしかにほとんどの子が背負ってたっけ。
子どもって案外、ああいうのが好きなのかもしれない。

「それにね、日能研ってすごく楽しそうじゃん」と言う。
そう?数回テスト受けに行っただけで、実際の授業は受けてないんだから、あまりわからないんじゃない?
「だってほら。イカ頭巾ちゃん。楽しそうじゃん。」

え…。イカ頭巾ちゃん…ですか?
それはWebのサイト。
お受験同盟に参加していらっしゃるイカ頭巾さまが作っていらっしゃるサイトで、あまりに面白いから長男くんにも見せたら、彼も大ファンになったのだ。

「ああいうのいいよね。やっぱりオレ、日能研に行きたい。だめ?」
だ、だめじゃないよ。すごく助かるよ。
ああ、でも、何か日能研を誤解してないかー?
ほんとうにそれでいいのだろうか…。

後からパパぽんに話すと、
「らしくていいじゃん。それくらいお気楽なほうが頼もしいよ。手続きよろしくね。」

はあ…。
本人もパパぽんもいいと言うならそれでいいのだけど。
なんだかいつもわたしは考えすぎて、ピントがずれてる気がしてくる。
変だなぁ。本当にピントがずれているのはわたしなのかなぁ。

だけどさ、今の塾になんて説明しよう。
NバッグとN研リカちゃんが転塾の理由だなんて、とても言えません。

結局、今の塾には「特待テストに通ったので…」と告げた。
この塾の方々は本当に親身で熱心な先生ばかりで、校長先生などは、なんとかここでも特待にならないかと本部に掛け合ってくださったらしい。
「結局、ご期待に沿える金額は残念ながらご提供できないということで…。力不足で大変申し訳ございません。」と、丁寧にそして悔しそうにおっしゃった。
そこまでしてくださったなんて…。ほんとうにありがとうございます。余計なお手間をとらせてしまいました。
「新5年生で移られるのでしたら、まだこちらで冬期講習も1月もあります。どうぞ肩身の狭い思いなどなさらず、堂々とお通いになってくださるようお伝えください。」
聞いていて頭が下がる気持ちでいっぱいだった。

しつこい引止めなど一切なかった。これからもないと保証してくださった。
事務の方もとても快く手続きをしてくださった。
改めて考えてみると、サピとN研(2校舎)に今まで直接行ったけれど、ここの塾の校長先生や教科の先生、事務の人が一番レベルが高かったように思う。
同じ塾仲間のママさんたちも同じように言っている。
「スタッフがすごくいいよね」って。

長男くん本人とお金を出してくれるパパぽんが日能研に決めたのだから、それでわたしも賛成する。
だけど、今の塾の良さには未練たっぷりなのも否めない。
ここに通ったおかげで、成績があがったのは確かなのだし。

「なんだか日能研の商売上手にハマッタ気がしない?」
パパぽんにそう言ったら笑われた。
「そりゃそうだよ。でもハマッタんじゃなくて利害が一致したってことじゃない?商売がうまいほうを賢く利用するのが消費者のセオリーだよ。あんまり難しく考えないの!」

はーい…。わかりました。そういうことにしておきます。
長男くんの単純さ素直さは、きっとパパ似ね。
わたしはやっぱりあれこれ気を回しすぎだわ。
でも自分のそういう部分も大事にしたいんだけどね。

今の塾には深く感謝している。ほんとうにありがとうございました。
6年生になったら志望校別講座に行くのも手かもしれない。
もしも再び新4年生の段階で塾を選ぶとしたらきっとここにしているでしょう。
巡り合えた縁と運。
とてもいい塾に恵まれたと思っています。

N研に入塾の手続きに行ったら、その場でNバッグをいただいた。
さっそくあちらこちら見て背負ってる長男くん。
念願かなってよかったね。
入試まであと2年ちょっと。
健康で、充実した毎日を過ごせますように…。





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